キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【劣情】
—――――鈍い音と共にドアが外れ、そのまま中に入る。
「っ、碧音!」
ドアの傍で小さくうずくまってる碧音に駆け寄った。
「碧音、もうだいじょ、」
パシッ!
それは、俺が伸ばした手を碧音が振り払った音だった。
「……碧音?」
「い、で……っこないで……」
「碧音?!」
「やだ、や……はなれろっ」
近づいて碧音の肩を引き寄せようとしても抵抗してズリ、足を引きずって後ずさる。全身で拒絶を示された。
「皐月、刹那は?」
「どうした!?」
後ろで2人の声がする。けど今は答えていられない。
「碧音、大丈夫だから」
「っ………、ないで、やだ」
体を丸め耳を塞いで、弱々しく首を振った。吐く息は荒く不安定で、今にも過呼吸を起こすんじゃないかと心配になる。