キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「お待たせしました」
皐月がテーブルの上に袋を置くと、各自自分の昼ご飯を漁って取る。
「碧音、それお前が食べたいっつってた限定のパンだからな!心して食え」
「ん、ありがと」
「うわぁああずるい!!」
碧音君がほんの、ほんの少し口の端を上げ『ありがと』と言った姿に萌え。こらえきれなくてつい声に出してしまった。
碧音君の通常運転の無表情からのちょっとした微笑は最強だ。鼻息が荒くなったため、両手で顔を覆う。
「明日歌ちゃーん、こっち向きな」
「はい?」
振り返ると同時にパシャリ、カメラのシャッター音が意味することを理解するのに数秒。
「パシャリって、写真撮りました?!」
「いい感じに撮れてるよー」
黒のスマホを片手で器用に操作する星渚さんに、疑問を抱かざるを得ない。
「あの、どうするんですか?」
「ん?痴女発見って画像付きでツイートしちゃおうかなって」
「何考えてるんですか!止めてくださいツイートされたら私外歩けないですよ?!」
さらりと軽いノリで鬼畜な発言をなさるんですね星渚さん。菜流と他の女子の扱いの差がありすぎる。
「嫌なら暫く黙ってようねー。俺ら食事中」
「はい、すみませんお口にチャックします。ごゆっくりお食事を楽しんでください」
「星渚、俺にも画像送れよ」
牛丼の肉を目一杯口に頬張る皐月は、割り箸でスマホを指す。
「ダメです。絶対今後脅しに使われそう」
皐月が考えつきそうな質の悪い悪戯だ。
「こらこら2人共、やり過ぎ」
「藍、こいつを庇う必要はねえ」
サンドウィッチを食べ終わり食後のコーヒーを飲む藍さんが助け船を出してくれるも、皐月には効果がないらしい。
皐月は藍さんの大人な振る舞いを見習った方が良いと思う。
「うまかった」
小さくぽつりと溢し、両手を胸の前でちゃんと合わせ『ご馳走さま』のポーズをした碧音君にまた発狂しそうになったけれど、ここで騒げば今度こそ痴女発見プラス画像付きのツイートをされかねないので、直ぐさま堪えたのだった。
――――――――――――
―――――……
「カウント始めるよ。刹那、オッケー?」
「大丈夫」