キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「碧音、分かってる。分かってるから」
ゆっくり背中に手をあてた。
碧音にとって、無理矢理引っ張り出されたくなかった記憶。それを急に、しかも他人にこじ開けられた。
「大丈夫だって」
碧音の力が少しだけ、緩まった。
その手にふと視線を滑らせると、手の平の横や手の甲の関節の部分が赤く擦れている。
小屋のドアを叩き続けたせいでこうなったのか。声が出ない代わりに助けに来てくれ、気づいてと願いながら叩いていたんだ。
こんなに傷を作るまで。
痛かったよな。
「刹那、疲れたでしょ。少し寝てな」
「…………ん」
星渚に言われると、数分も経たない内に規則的に肩を上下させ眠った。