キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
両手と顔をガラスにベタッとくっつけていたら、気づいた皐月が中指を立てこちらを睨んできた。
くたばれってか。目付きが鋭い皐月にやられると凄みが増す。
仕方なく諦めて大人しく椅子に座り、テーブルに持ってきた夏休みの課題を広げる。
宿題を溜めるとどうなるか身を持って体験済みなので、計画的にやろうと思う。
BGMは勿論皆の演奏。
数学の問題を、1問1問教科書を参考にして解いていく。でも、応用になるともはや自分が今何をやってるかすら、分からなくなる。あるあるだよね。
答えを見てしまえば楽だという誘惑に負けないために、解答集は家に置いてきた。
ちょ、答えが整数にならないの何で?!ええ、範囲とか場合分けなんて知らないよ。
こうなってくると、意識は自然と皆の演奏の方へ向かってしまう。私が来た時とは違う曲を歌うようだ。
普段の練習よりも念入りに同じフレーズを練習しているのは、それだけ完成度の高いものにして、イベントに挑みたいという気持ちの表れ。
……私も頑張ろう。気持ちを改め、数学の問題とにらめっこした。