キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


でも嬉しいことに今日は俺のうちに泊まってくらしい。そのために今日と明日分の勉強や用事を完璧に終わらせてきた、と。


すげえよな、まじで。俺には真似できねえ。


机に向かって勉強すんのは大学だけで十分だっつーのに、家に帰っても夜遅くまで勉強ってさ。


「皐月はどうなわけ?」


「暇さえあればベースやってる」


「お前の恋人はベースか」


「ちげえし!俺だって人間と付き合いたいわ」


言うと、俺みたいに口を開け大声で笑うんじゃなくてクツクツ喉を鳴らしながら、控え目に口角を上げる。


きっと礼儀作法、マナーもしっかり体に染みつくまで教えられてるから、笑い方もこうしなさいああしなさいと指導されたのかもしれない。


俺の前でもそうなのかと思うと少し、ほんの少し同情にも似た痛みが心臓の奥をつついた。


人が頑張ってることに対してそういう感情になるなんてどうかしてる、とすぐ思考を切り替えたけど。


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