キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「なれるんじゃね」
あの人とは直人が憧れているバンドでベースを担当してる人のこと。
なんでもベースだけでなくギターやドラムまで出来て、とにかく全てが格好良いんだと毎日のように力説されれば、嫌でもプロフィールからバンドの曲まで俺も覚えてしまう。
「練習して出来るようになったら、皐月にも聞かせてやるよ!」
「何で上から目線なわけ」
「クラスの女子にさ、俺ベースやってるんだっつったら絶対モテるよなあ!」
「そんな簡単にモテねえよ」
「『直人君のベース最高!』って言われちゃったりして」
「調子いいやつ」
悪態をついても直人は気にせず、ベースを抱きしめていた。
それからというもの直人は学校にこっそりベースについて載ってる雑誌を持ってきて読んだり。
指に絆創膏を巻いてるからどうしたのかと聞くと『ベースの練習のし過ぎで指の豆が潰れた。けど上達したんだ!』と言ってきたり。
俺もその楽しそうな様子を見てるうちにやってみたくなり、直人に教わってやり始めた。