キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
勿論ベースなんて何万、何十万もする高いもの親が買ってくれるわけもないから直人のベースを借りて、だけど。
「このコードはどれ?」
「ああ、それはここ」
いつもは俺の家で集まることが多いけど今日は直人の家に遊びにきてベースの練習中。
直人は俺の何倍も上手くなってて、これじゃ先生と生徒だ。
「俺、将来はプロのベーシストになるんだ」
希望の光を漆黒の瞳に宿し、迷いのない真っ直ぐな声で宣言する。
「そんで、あの人と共演してやる!」
「直人なら出来るだろ」
その直人の憧れている人が碧音の父親だったと知るのは、もう少し先の話。