キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


お前、自分の感情には素直な奴なのに。作り笑いなんか、すんなよ。


バレバレだっつの。


「俺、大人になったら父さんの会社継がなきゃなんねえの。すげえだろ!そのためには頑張って色んな勉強しないとさ、ダメじゃん」


ダメ、って。そんな。


「多分忙しくなって、ベース弄る時間なくなるっぽいんだよな」


「お前の将来の夢は、プロのベーシストになることなんだろ?!会社の社長になることじゃ、ねえだろ」


俺は、お前のその姿見たいって思ってたんだぞ。


直人の下手な作り笑いが崩れて、下唇を噛みしめた。


「父さんと母さん、俺に期待してくれてて」


「で、でも……」


「中学の間は好きなことやれたしな。お前と遊べて、ベースもやらせてもらえた」


中学生のガキにしては、大人な考え方。


「もっと足掻いていいんじゃねえの、我が儘言ってもいいじゃんかっ」


自分の本当の夢、諦めちまうのかよ。憧れている人と共演出来なくなるぞ。


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