キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
それに対して『はいはい、ごめんね』って口では謝ってるけど、思いっきり頬をつねっていた。
お前ら小学生か。
「そうそう、お前が昔好きだったバンドあるじゃん?そのベーシスト、碧音の父親だから」
「……っは、え?!」
パクパクと口を開閉して、表情一つ変えず明日歌の頬をつねる碧音に焦点を合わせる。
そりゃびっくりするよな、俺も事実を知ったのはわりと最近。本当にたまたまで。
「あの、刹那さんの……子供?」
「……そうですけど」
ジーっと見られるのが堪に障ったのか、声に棘がある。直人もそれに気づき、ごめんと謝った。
「俺、好きだったんだ。君のお父さんがいたバンド」
「ああ。はい」
「刹那、今ちょっと嬉しかったんでしょ」
目ざとく微々たる碧音の表情の緩みを指摘した星渚に『別に』そっけなく返す。