キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音は自分にだけじゃなく、誰に対しても通常運転でこういうそっけなくて愛想がいいとは言えない態度だということが分かり、直人も胸を撫で下ろしたようにみえた。
「これから練習するから、浅野君好きなだけ見てってよ。明日歌ちゃんと一緒に」
星渚が明日歌と直人に地下室へ行くよう促す。
「はい、ありがとうございます」
答えた時、僅かに直人の顔が曇ったのを俺は、見逃した。
――――――――
―――……
「橘さんは、よく練習見に来てるんだね」
「そうなんです。皆の演奏してる姿を見るのも楽しみですけど、この空間が居心地よくて」
背もたれのない簡易的な椅子に座り、碧音君達の準備が終わるまでしばし浅野さんとおしゃべり。
「皆個性的だけど、上手くまとまってる。橘さんも含めて」
「私もですか?」
「勿論。橘さんだってバンドには入ってなくても皐月達の仲間だろ?」
「そ、そうですかね」
改めて人から言われると、どうにも照れる。……照れるけど、嬉しい。他人の目にも、そういう風に映っているなら。