キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
皐月は演奏に集中していたし、あの表情の違いは至近距離で見ていないと発見することが困難だ。
「こんなにレベル高いんだから、オファーとかあったりするんでしょう」
「んー。どうかな」
藍の答えは、肯定的にも否定的にも解釈出来る。曖昧にしたってことは、デビューの話を持ちかけられたことがあるのかも。
だって、midnightだ。
「やっぱ、これだけ上手くなるには相当練習するんですよね。バイトも学校もそれぞれあるのに大変だ。……そうまでするんだから、インディーズになるかメジャーデビュー、目指してるんですよね?」
「それは……」
珍しく言葉を濁す皐月。
意外、皐月なら『当たり前じゃねえか!』くらい言ってみせると思ったけど。
「はっきり答えられないなら――さっさと、やめちゃえよ」
この場にいる、浅野さん以外全員が耳を疑った。
やめちゃえよ。何を?バンドを。