キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
もう1つのスタジオには居ないし、廊下も歩いてないし………受け付け?
向かう方向を変え受け付けに行くも、姿はなかった。本当にどこに居るの?
藍さんが行き先を告げずふらふらするなんて、珍しい。
大体『寄るとこあるから、先に行ってて』と誰かしらに声をかけているのに。なんて思いつつ、一応外に出てるかもしれないと自動ドアを通り抜けると。
「あ、いた」
見慣れた背中を見つけ、声をかけようとした――――けど、出来なかった。
藍さんが、知らない人と喋っているから。雰囲気は藍さんよりは幼く、多分私より年上。
「今日は家に帰ってこいよ」
「は?どうでもいい」
あれ、この人。
「どうでもいいってなあ。母さん夕飯作って待ってるんだぞ」
「へぇ。お疲れ様」
大人っぽいお洒落な服装、藍さんよりも明るめのマロンブラウンの髪で、少したれ目。
「2、3日も帰ってこないのは、まずいだろ?」
「あんたに言われる筋合いないから」
この人、もの凄く藍さんに似てる。
喋り方は刺々しいし、藍さんのような柔和で穏やかなオーラは出てないけど、見た目が似ているのだ。