キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


浅野さんの顔を見る限り、冗談で言ってるようには思えない。


というか、冗談でも言っちゃいけない台詞だよね。どうしてこの場で、いきなりそれを言いうの。


1番呆然としているのは、皐月だった。


「直人、なん……」


「やめちゃえよ。皐月、お前いつまでこれ続けんの?いつまで、夢みてんのさ。将来のことちゃんと考えろよ。ガキのままじゃ、いられないだろう」


浅野さんはもう、笑顔を作ろうとはしなかった。


鋭利なナイフと化した言葉が止めどなく溢れ出し心を抉る。


「仲良しごっこのバンドに費やす時間を、自分の将来のために使うべきだって。そう思わないか?俺は、俺はっ必死で社長になるために頑張ってる。近々留学もするつもりだ、もっと成長出来るように」


単語だけが、バラバラ耳に入ってくる。何を、言ってるんだ。私も星渚さんも碧音君も、藍も。顔つきが変わる。


「そうだ、俺の会社で働かせてやってもいいんだぜ」


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