キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
ちゃんと大きなステージに立って歓声をあび、認められているのだ。
「ガキの頃の約束、律儀に覚えてて。しかも俺がお前にやったベース、まだ使ってんのかよ」
壁に立てかけてある、年季のはいった皐月のベース。あれは、浅野さんのものだった。
皐月がいつもいつも丁寧に手入れする姿を、私は見ていた。皐月にとって、大切なベースだから。
「直人がくれたベースだぞ、壊れるまで使うに決まってんだろ」
クシャリ、顔を歪めて浅野さんの瞳を見つめる。弱々しい皐月のこういう表情を、初めて知った。
「まさか、約束のためだけに今までバンドに時間費やしてきたとか言わないよな?俺の気まぐれで言った約束信じて、3年以上も……っ」
「浅野さん何言ってるんですか、やめましょうよ」
自分が皐月にしてること理解してますか?大体、練習を見たいと言ったのはあなたでしょう。なのに、こんな。
「将来どうするか決めないで仲良しごっこのバンドやって、約束果たした気になって。お前それで満足なのか?」
一旦この場を収めようとしたのに、浅野さんは無視。