キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音君や藍、星渚さんは怒りの色に染まってる。当然だ、仲良しごっこのバンドだと言われて平気でいられるわけがない。
「――皐月、お前今まで何やってたんだよ。こんなお前のバンドなんか、あってもなくても何も変わらない。無駄なんだ」
「っいい加減にしろよ!」
浅野さんに向かって飛びかかり胸ぐらを掴んだのは皐月ではなく――碧音君だった。
藍が止めようと碧音君の細い腕を掴もうとしたけど、一歩遅かった。
「お前がっ、お前に皐月の今までを否定する権利なんてないだろ!」
「くっ……」
冷静さを欠き我を忘れ、激情に駆られている。
こうなった碧音君を目の当たりにしたのは二度目。
一度目は藍がバンドを辞めるかもしれなくて、私と碧音君が言い合いになった時。
浅野さんも浅野さんで、胸ぐらを掴みかかってきた相手が散々罵った皐月じゃないことに驚いて声も出ないようだ。
「バンドのために皐月が頑張ってるとこ、お前ちゃんと見たことないくせに。皐月なりに努力や苦労もして積み重ねてきたものを、お前が否定すんな!」
「碧音君っ!」