キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「星渚も藍も、皐月も。いてもいなくても変わらないとか、そんなわけないだろ。無駄なことなんてないっ」
「刹那」
服に刻まれる皺が更に濃くなろうとしたところで、星渚さんが見かねて碧音君の手首を浅野さんの胸元から離した。
「星渚、何すんだよ」
劣情を晒け出した碧音君は、酷く不安定だ。
自分の手首を拘束している星渚さんの手を振り払おうと躍起になるが、びくともしない。
息苦しさから解放された浅野さんは無意識のうちに息を止めていたのか、肩で大きく息をして酸素を貪る。
「怒りたいのは、さーつーき」
ピリピリとしたこの場の空気に似つかわしくないゆるゆると脱力した言い方。
しかし言っている内容は正論なのだから、碧音君もこれ以上は暴れなかった。
「直人、そんな風に、思ってたのか」
信じたくないけれど、と言葉の裏に忍ばせたような物言いで。