キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


とは口に出さないけれど狼狽える私に、星渚さんがコクリと首を縦に振る。


本当だ、と。


「皐月が、俺に」


「ああ。直人の会社の名前をニュースで聞いた時や会社のロゴが入った商品を見た時。直人はすっげえ重いもん背負って頑張ってんだな。俺とは違う、って思ってた」


皐月も浅野さんと同じ様な感情を、抱いていた。


「直人は俺の背中を追いかけてるって言ってたけど。俺はずっと、直人を追いかけてた」


浅野さんが顔を上げ、涙で濡れ少し赤くなった目が露になる。


「俺は、直人に憧れてたんだって。中学の頃から」


「……嘘だ」


「嘘じゃねえよ。あーあ、俺の憧れてた直人はこんなんじゃなかったはずなんだけどなあー」


わざとらしく目を伏せる。


やっといつもの調子に戻った皐月。


「直人が失くしたもの、俺が全部持ってるって言うけどそうでもねえよ。俺が持ってないもの、お前もたくさん持ってんじゃん」


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