キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「碧音君は、そういう経験があるの……?」
「——―あるって、言ったら」
クシャリ、綺麗な顔が歪む。
碧音君の過去に、何があったんだろう。今回の件で過去の断片を知ってしまった。
このまま引き下がるのか、それとも。私は。
君の世界に、飛び込んでみたい。
今しかないと思った。
「どうしてそんなに……泣きそうな顔をしてるの」
一歩近づく。
「碧音君にそんな顔をさせる理由を、知りたい」
今のままじゃ私は碧音君に何もしてあげられない。
そう言うと、碧音君は少し間をあけて。
「—―――いいよ」
ゆっくり言葉を紡いだ。