キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
お酒を飲んだ時ほど俺に八つ当たりしてきたり暴力を振るう回数が増えてしまったりするから。
お願いだから、そうはなりませんようにと祈りつつ黙々と宿題に手をつける。
ごく、ごく、ごく。僅かに、しかし絶えず聞こえるお酒を飲む音に一々びくびく怯える自分が嫌だ。
けど、体に染み込んだ殴ったり蹴ったりされる時の痛みが嫌でも頭を過ぎる。1本、2本、ついは3本目のお酒の缶が空になった。
「……ねえ」
怠慢な動きで視線を寄こすお母さんの目に、俺は自分の子供として映っていないんだろう。
「ビール、冷蔵庫から持ってきて」
「は、はい」
本当はお酒飲み過ぎだから止めようと言いたかったけど、もし俺がそう言ったら殴られるかも。
冷蔵庫から出した缶を恐る恐るお母さんに差し出した。
ありがとうの一言もなく俺の手の中から缶を乱雑にひったくってプシュッとプルタブを開ける。
ねえお母さん、止めようよ。学校で勉強した、お酒は飲み過ぎるとダメなんだって。
毎日たくさん飲んでたら危ない。言いたいことはどんどん湧き出てくるのに全然言葉になって口から出てこない。
そうやってもたもたしていると『いつまでそこに突っ立ってんだよ』鋭い声がとんできた。