キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「ごめんなさい。……でも」
「何?酒飲むなとでも言いたいわけ?子供が親に口答えするんじゃないわよ」
「ごめんなさい」
「お前は黙って言うこと聞いてればいいのよ」
「……はい」
頷いて部屋の端にまた戻る。窓の方を見れば外は真っ暗闇で何も見えず、時計は夜の9時を指していて。
ああ、お腹空いた。学校から家に帰ってきて夕飯も食べてないし、当然といえば当然なんだけど。お腹空いたなあ、でも勝手に冷蔵庫にある食べ物とると怒られるしな。
なんて考えているとドアノブをガチャリ、捻る音がした。
――――お父さんが、仕事から帰ってきたんだ。
「あっ。お帰りなさ~い」
「夕飯の弁当、買ってきた。お前いつものやつでいいだろ?」
ガサリと揺らすコンビニ袋に入ってるお弁当は、2つ。俺の分はない。
「うん。ありがとー」
甘ったるい声でお父さんに近寄ってコンビニの袋を受け取り、机に並べた。
いいな、おいしそう。ゴクリと生唾を飲み込む。俺のことはお構いなしにお弁当を食べる両親が羨ましくて……ずるい。