キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
空腹を紛らわせるために水でも飲もうと立ち上がり『お母さん、水飲んでもいい?』と聞けば『勝手にすれば』と一度もこちらを見ずに短く言い放つ。
青みがかった灰色の瞳は、冷たい。
お父さんもそれは同じ……いや、お母さんより酷いかもしれない。
優しい目をしているところは今まで見たことがないんだ。
透明なグラスに注いだ水をごくり、ごくりと飲み干してみるもこんな程度じゃ空腹は完全に抑えきれず。
せめてオレンジジュースや炭酸ならもっと誤魔化せたかもしれないな。
「あー、もうお腹いっぱい」
「まだ半分飯残ってんじゃん」
「私さっきビール飲んじゃったからなあ」
ガタン、お母さんが椅子から立ち上がり俺に近づいてきた。もしかして、とある考えが浮かび上がる。
「これ、食っていいよ」
予想通りお母さんは残ったお弁当のご飯をくれると言った。
「ありがとう、ございます」