キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


学校でクラスの子がよく言う。


『宿題ちゃんとやらなかったからってゲーム没収された』『夜遅くまで起きてたら怒られてこれからは9時には寝ろって言われてさあ』『俺だって、遊んで遅くに帰ったせいで1週間ゲーム禁止だよ!』と。


その程度で不満そうに文句を言う理由が理解出来なかった。


9時に寝なきゃいけないくらい、たった1週間ゲームが出来ないくらいで何でそんなに文句言うの。


殴られたり蹴ったりされるわけじゃないんだろ?


体中が痛くなることは、ないんでしょ。


「……嫌だよ……」


掠れた自分の声が狭い空間に響く。真っ暗闇が怖いからぎゅっと目を閉じて体を丸める。


早く、早く時間が過ぎればいい。1分でも1秒でも早く時が進んで欲しい。


「……っ……」


息が苦しい。カタカタ震えが止まらない。いつ鍵を外して戸を開けてくれるんだ、早く早く早く。まだかな、まだかなもう結構時間経ったよ許してお父さん。


ひたすら目を閉じて黒に侵食された空間に座り続けていると―――。


カチャッ!


あ、この音は鍵を開けた音だ。ついでカタリと戸を開ける軽い音も。


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