キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
ゆっくりと目を開ければ少しずつ開いていく戸の隙間から一筋の光が差し込んできた。
…………やっと、開けてもらえたんだ。
「おら、出ろ」
「あっ」
また強く腕を引っ張られ押し入れから部屋に出される。部屋には、夕日のオレンジが侵入していて閉じ込められてから約4時間は経ったのかと計算する。
「てめえ、今度今日みたいなことしたらただじゃおかねえからな!」
パンッ!乾いた音が虚しく響いたのは、お父さんが俺の頬を平手打ちしたせいだった。
じんじんと鈍い痛みが広がる。お父さん何で叩くの。そう思っても口から出る言葉はいつだって。
「ごめんなさい。もうしません」
「分かればいいんだよ」
お父さんはそう言ってさっさとテレビの前に座って、お母さんと番組を見始める。
俺が平手打ちされた時もお母さんは今みたいに平然とテレビを見てビールを飲んでいたのが視界の端に映った。
ゆっくり窓に目を向け、夕日の眩しさに目を細める。
光に、酷く安堵した。