キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「次のニュースは、虐待により5歳の男の子が搬送された病院で死亡したという事件についてです。警察の調べによると男の子の体には何か所か痣があり――」
テレビから流れるアナウンサーの台詞に、ギリリと心臓が痛む。こういうニュースを見るたび、思う。
いつかは自分もああなるんじゃないか、と。
お母さんとお父さんは他人に自分達が子供に暴力を振るっていると疑われないようにしている。
例えば、学校の健康診断で服を脱いで体を医者に見せるからその時期になると暴力はほぼなくなる。
体育で水泳の授業が始まると同じように痣があると先生に不審がられる危険があるから殴ったり蹴ったりされる回数は減る。
だから今まで、周りの人に気づいてもらえなかった。
それに、お母さんにもお父さんにも繰り返し言われた、『もし痛い目に遭わされてるって他の奴に言ったら、ただじゃおかない』って。
普段よりも更に強い力で暴力を振るわれるかもしれないと思うと、どうしても怖くて言い出せないんだ。
一言、助けてって言えばいいんだろうけど。
周りからすれば簡単すぎること。でも、俺は口から出せない。