キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


俺が、臆病なの。勇気が足りないせい?自業自得?……誰か教えて。


ぐるぐる色々なことを考えていると、ふいに無機質な呼び鈴の音が鳴った。


「……ちっ。誰だよ」


機嫌が悪い時の低い声で舌打ちし、粗方部屋を片づけてから『はぁーい』あの猫なで声でドアを半分開ける。


「こんにちはぁ、大家の水谷です」


「……、こんにちは」


この部屋に誰かが訪ねてくるなんて、珍しい。しかも今回は相手が大家さん。


お母さんの顔が引きつっているのが分かる。早く帰れよって思ってそう。


「ちょっとねぇ、お話があって」


朗らかでゆったりとした喋り方。けれど表情は、どことなく強張っているようにみえた。お話?なんだろう?


「お話、ですか」


「実はねぇ。この部屋からたまにドンッ!!っていう物音とお子さんの呻き声というか泣いているような声が聞こえてくるって言われたのよう」


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