キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】



「それは、うちの夫と子供がじゃれて遊んでる最中ふざけすぎて夫が壁にぶつかったりしたんだと思います。この子ったら、夫が帰ってくるとすぐ遊んでってせがむんですよ」


嘘つき。


お父さんが、俺と。遊んだこと、ないじゃないか。


本当は俺だって友達がするようにお父さんとサッカーや野球、してみたいよ。けど俺のお父さんとじゃ無理だ。


「そうねぇ、お子さんまだ小さいしそういうこともあるだろうけど」


おばあさんは言葉を濁しつつも首を捻る。時折、お母さんを品定めするような目つきをして。


おばあさんは結局、何を言いたいのかな。遠回しに遠回しに言葉を選んで言ってるようだから、話の核がぼやけてみえる。


「お子さん、今おいくつでしたっけ?」


「10歳です」


「あらあら~大きくなったわねぇ。ここに引っ越してきた時はもっと小さかったのに」


「ええ。まあ」


「この年の子供の世話って、大変でしょう」


「そんなことないですよ、成長していく姿を見るのは楽しいですし」


お母さん、本当はそんなこと思ってない、と今俺が言ったならどうなるんだろう。


おばあさんは、助けてくれる?それとも、お母さんに後で怒られるだけ?



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