キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
――――――――――――――
―――……
「…………え?ゆ、ゆう?」
碧音君の口からこぼれたそれに、頭が真っ白になる。
ゆう、ユウ。
今の話の流れからすると、かなでという名前は確実に。
「優は。俺の、名前。今の両親と暮らす前まで、だけど」
語る碧音君は、淡々としていて。私は話に追いついていくのがやっとだというのに。
「八枝優。それが、俺の名前だった」
やえ、ゆう。刹那碧音ではなく、八枝優。優君は碧音君で、碧音君は優君。
同一人物。
そんな重要で大切なこと、さらっと言わないで欲しい。私の頭の中は大混乱だ。
碧音君は『お前、意味分かんないって顔してる』困ったように笑い、私の頬をつねってきた。
地味に痛いけど今はそれどころじゃないのだ。
「取り敢えず、今と昔じゃ名前が違うってことだけ、分かって」