キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
碧音君も、態度には出さなくても心の中では痛みと戦っているのだろう。自ら引っ張り出した記憶による、痛み。
それと戦いながらもこうして話してくれているのだ。
「続き、話すよ」
「……うん」
徐々に徐々に、けれど確実に碧音君が頑なに他人に足を踏み入れさせず守っていた世界を知り始めている。
やっと、碧音君の世界が、見えてきた。
淡い茜色の夕日が私達を包み込んだ。
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――――……
「ごめんなさいごめんなさい!!」
「黙れ!」
「いっ……」
また些細なことで俺に八つ当たりして殴る蹴るを繰り返されていた。
「ごめんなさい、ごめんなさい!」
謝っても謝っても、お父さんは何も答えてくれない。