キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「おい、何があった」
交番の中からもう1人背の高い男の人が出てきて俺の顔を覗き込んできた。
「大丈夫だから、ゆっくりおじさんに喋ってくれないかな?」
「お母さんとお父さんが」
「うんうん。2人が?」
「殴ったり、蹴ったりしてきて」
言えば、おじさん達の表情が変わる。2人で何やらこそこそと耳打ちし始めた。
「……坊や、中でゆっくりお話ししようか?」
「学校には今日はお休みしますっておじさんが伝えておくから。坊やは何も心配しなくていいぞ」
「助けて、俺っ」
「安心しなさい。おじさん達が何とかする」
ぽんぽん、頭を撫でられる。大きくて、ごつごつした手だった。この手でいろんな人を助けてきたんだよね。警察は、強いんだよね。
「正直に、全部話してくれ」
そうして交番の中へ連れて行かれた。2人のおじさんは警察官なんだ、守ってくれる。だからこれでもう、大丈夫なはず、なのに。
何故だろう、恐怖は拭いきれなくて。
漠然とした不安が、心を支配した。