キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
切なくて、どうしようもなく、虚しくて。
「弱い自分を、優を捨てようって」
それは幼い子供ながらも必死で探し出した、決意だった。
「あの家族も、もういない。いらない」
こんな碧音君の声聞いたことなかった。
「あの人達じゃなくて、俺が。家族を捨てた」
捨てた、家族を。
まるでゴミ箱に紙くずを捨てるのと何ら変わらないかのような言い方。碧音君の瞳の奥が歪み、感情を削ぎ落としたように無表情になる。
「碧音君、昔の自分や家族を、捨てただなんて言わないで」
「捨てなきゃ、前に進めなかった」
言われ、言葉に詰まる。まだまだ幼い子供が、自分で立ち上がるにはそれくらいしないとダメだった。
新しい環境に身を置くには、それなりの覚悟が必要だった。
どれほどの矛盾した思いを抱え込んできたのだろう。
傷ついた心で、足で立ち続けるのはどれほど痛かっただろう。
苦しかったんだよね。大人に頼って甘えたくても、その方法が分からなかったはずだ。だって、教えてもらえなかったから。
「……昔こういうことがあったから、俺は浅野みたいに簡単に人を否定するやつは嫌い」