キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「……碧音君」
「説教ならいらない」
「違うよ」
「暴力を振るわれて嫌だったかもしれないけど、それでも唯一の家族だとか、弱い部分も自分の一部だ、とかそういうの止めろよ」
「碧音君」
「吐き気がする、そんな言葉っ」
「言わない、私はそれが言いたいんじゃないよ」
一歩、二歩と距離を縮め青みがかった灰色の瞳を見つめる。
「ずっとずっと長い間暴力を振るってきた人間を親だと思え、なんて言えない。お母さんやお父さんにも事情があって碧音君に八つ当たりしただけだとも言わない」
「…………」
「いつかお母さんとお父さんに会いに行って話し合った方が良いそしたら和解出来る、とも思ってないから」
碧音君にとってそれらの言葉は心臓を抉る凶器でしかないのだ。碧音君を、傷つける。