キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
そして案の定小さく『……チーズケーキ』と呟くから店員に追加注文した。お前のご機嫌取りは簡単でいいな。
「ケーキ、うまい?」
年下の彼女はさっきまでの不機嫌でむすっとした顔はどこへやら、目をキラキラさせてケーキを口に運ぶ。お子様め。
「……美味しい」
「よかったじゃん」
こくりと頷いてサクッとフォークで刺したチーズケーキを口の中へ。幸せそうに食うよなー、お前。
残りのライチティーを喉に流し込みつつその様子を見て自然と頬を緩ませていたことに気がついたのは、それから少し後のことだった。
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「北山駅ー、北山駅に到着です」
最寄り駅に到着したことを知らせるアナウンスが響く中電車から降りて、改札を出る。
カサカサと乾いた音をたて色づいた落ち葉が足元を舞い、冷たい秋の風が全身を撫でていく。そろそろマフラーすっかな。
さみいし。信号を待つ間、ふと紺色に呑み込まれそうな空を仰ぐ。
「あー…………」
引き返せる?いいや、気づいてしまった。今の関係が壊れる覚悟はある?振り向かせる自信は?相手は手強い、けど。俺は。