キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「――――好き、だ」
想いを乗せた言葉は、道路を走る車の音に掻き消されたせいで周りの人間には聞こえなかっただろう。
でも自分の鼓膜には、それがこびりついて離れない。
俺は、明日歌のことが好きなんだ。好きだからこそ『もう。碧音君に対しての気持ち、再確認させないでよね』その台詞に焦燥感を覚えた。
切ない表情をしたあいつを抱きしめないと、そう思ってしまった。
今までも明日歌に恋愛感情に似たものを感じたことはあったけど、その度に違うと自分に言い聞かせて、曖昧なそれを胸の奥底にしまい蓋をしていて。
でも、ついに気持ちが蓋を無視して溢れ出てきた。
「……俺が、あいつをねー」
警察に本気で相談しに行こうかと迷う程の変態だし、アホだし、年下だしほっとけねぇ女だけど。
相手のことを理解しようと努力して、それぞれ人間には弱い部分があることもちゃんと分かってて。
笑った顔は素直に可愛いし人を惹きつける力のある明日歌を。気づいたら好きになっていたわけで。
しかし意中の彼女は、別の男に夢中。果たして俺のことを少しでも恋愛対象としてみてくれるのかどうか。……いや、違う。恋愛対象に入ってみせる。
んで、必ず振り向かせてやる。碧音とはすでにスタートラインから違ってるのは十分分かってる。でも、そんなん関係ねぇ。
「待ってろ」
すぐに、追い越してやるから。