キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「…………っ!」
思わず両手で顔を覆う。じゃないとニヤけっぱなしの口元と荒い呼吸に鼻息で碧音君に絶対零度の瞳を向けられてしまうからだ。
どうしよう、萌える、あまりの突然のデレに心臓が痛い。まさかこんな形であーんが実現するとは思ってもみなかったけど。
「おい荒い鼻息手の隙間から漏れてんぞ」
「今はこれが限界なの!」
「待て待て刹那、そのピックスどうするつもり?明日歌ちゃんの首に向けてどうすんの?」
「物騒だよ碧音君!」
何とか深呼吸して気持ちを落ち着かせたところで、碧音君からピックスを奪う。先っちょが尖ってて案外痛いんだからね。
「ほらほら碧音君、怖いこと考えてないで残りのガトーショコラ食べなさいな」
「急にお母さん口調」
うへへと笑ってピックスで刺したショコラを渡す。私、碧音君の胃袋掴めてるんじゃないかな。
だとしたら自分を褒めてやりたい。皆でタッパーの中のショコラを談笑しつつ減らしていってる途中で――ガチャリ。
休憩室のドアが開けられた。ふんわり室内に流れ込むほんの少し官能的な、それでいて上品な香水の匂い。