キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


菜流に気づいたお兄さんはちらっとこちらに視線を寄越し、ニコッ、完璧な王子様スマイル。


「お兄さんイケメン……菜流のお兄さん王子様」


しかし、微笑みをすぐに真剣な表情に一変させ、ドラムスティックでカウントをとった。メンバー全員の目が、ギラリと光る。


「You say don't leave me here――」


瞬間、鳥肌がたった。ベースとギターのテクニックの巧さと力強いのに耳障りじゃない、全身の細胞が反応するようなドラムの音。


会場の雰囲気が、この人達により一瞬で支配された。全員が、夢中で曲に聞き入っている。


ずっと聴いていたい、終わらないで、吸い込まれそう――――そんな感覚に陥ってしまう。


そして何より心を鷲掴みにされたのは、ギターボーカルの人の声。


外見は艶のある黒髪に日焼けというものを知らないような色白の肌、少し華奢な身体つきで、バンドは似合わないんじゃないかと違和感を感じる程“綺麗”な男の子。


なのに、歌声はとても力強くて、芯が通っていて。


相反しているけど、逆にミスマッチなところが独特の雰囲気を醸し出している。目が逸らせない。

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