キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


そしてそんな明日歌ちゃんを見て皐月も一瞬顔を歪めた。あいつじゃなくて俺の方を向いていればいいだろ、とでも言いたそう。


この空間に居心地の良さを感じている人間が少数であることは間違いない。


「香澄、向こうでの生活ってどんな感じだった?」


碧音が香澄を見上げる。明日歌ちゃんの脳内では『無意識に上目遣いの碧音君萌える!』って考えと『彼女じゃなくて私に上目遣いして!』って考えが戦っているかもしれない。苦悩が顔に出てしまっている。


「そうねぇ。英語を話せるようになるために毎日必ず勉強して、バイトして、残りの時間は全部練習とライブに充ててたわ」


「ちゃんと食べてた?香澄料理下手だろ」


「下手じゃないわよ!ちょっと苦手なだけ。っていっても実際はハンバーガー食べて済ませる方が多かったけど」


「身体壊すよ」


「そういう碧音は好き嫌い減ったかしら?」


「……減った」


「本当~?」


「本当だよ。ね、刹那。明日歌ちゃんのおかげで少しはマシになったよな」


急に自分が話題に上がってきて、ぼーっとしてた明日歌ちゃんは『え、私?』とあたふた。


「へぇ、明日歌のおかげで?」


「まぁ。たまに家で練習するときに明日歌が飯作ってくれて。それで苦手なもの減った」


「碧音君に、褒められた……!」

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