キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「俺がお前を送っていこうと思ったから、そうしてるだけ。だからそんな落ち込んで気にする必要ない」
「そ、そうじゃなくて。勿論送ってもらえてありがたいよ」
「じゃあ、どうしたの。香澄がこっちに来てから、なんか変だけど」
「っ……と、それは」
「香澄と、何かあった?」
何かあった、というか。私が勝手に香澄さんと碧音君に嫉妬してるだけなんだ。つい最近まで海外にいた香澄さんと、ぎこちない距離感もなくずっと一緒にいたみたいに触れ合っているから。
香澄、と愛おしそうにあなたが彼女の名前を、呼ぶから。
「碧音君にとって」
「うん?」
聞きたくない、いやいっそ聞いてしまいたい。聞かない方がいいに決まってる、でも気になってしまう。
「香澄さんて、どういう存在なのかな」
「どうって」
碧音君は目を見開いたあと、頬を緩めて言葉を紡いだ。
「大切な人」
大切な、人。碧音君にとって香澄さんは、大切な人。碧音君の柔和な微笑みに、胸が軋んだ。星渚さん達に向ける笑顔や、私に向ける笑顔とは別の種類のもので。
仲間よりも上の、特別な存在だということをはっきり示された気がして。