キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「おい明日歌、目開けろって!下にいる人間めっちゃ小せぇ!」
「皐月今私にそんな余裕はない!!」
「景色見ないとつまんねぇだろ!」
「ははっ、さっき俺に強気なこと言ったくせして」
「そうなんだけどね?!無理でし、ぎゃぁああ!!!」
不意打ちでガン、と急降下。体がふっと浮く感覚に背筋が凍る。
「ふふふっ、面白いわねー!これ」
頑なに目を瞑っている私と違って、香澄さんは眼下に広がる景色を思いっ切り楽しんでいるようだ。このくらいのアトラクション、アメリカのものと比べたらどうってことないんだろう。
「また上がる?!上がるの!?」
もういいでょー!と声にならない叫びをあげる。私の両隣からは笑い声が。2人共、余裕ありすぎ。
お願いだからもう終わってという私の切なる願いが通じたのか、ゆっくり下に降りていきスタッフの『お帰りなさぁーい!』という声と共に地上に帰還できた。
「お、終わった……!」
ふらりとした足どりで何とか座席から降りて、アトラクションから離れた。
「乗る前に俺を挑発してきた誰かさん、大丈夫ですか」