キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「すみません、お手洗い行ってきますね」
「はぁーい、ここで待ってるわね」
なるべく香澄さんの顔を見ないようにして席を立った。いいや、このまま帰ってしまおう。
空気読もうとして遊園地に入ってしまったのがそもそも間違いだったんだ。
そうしなければ、2人がキスしたなんて話聞くこともなかったはず。自分の行動が招いた結果なんだよね。どんどん食事したお店から離れレストランエリアを抜けて入退場ゲートに向かう。
明るい曲が流れ続けていて、皆笑ってる楽しい空間とはおさらばだ。ゲートを出たら、あとでメールして謝っておけばいいよね。
早歩きのペースで足を動かしていた――、ら。
「明日歌!」
自分の名前を呼ばれて反射的に立ち止まった。
「待てって!」
「……皐月」
人目も気にせず大きな声で叫んで、こっちに走ってくる。でも、この状況で大人しく待つものか。
「あ、おい明日歌っ」
歩く速さを緩めずに人の波に乗っかり数メートル先のゲートへ行く。
こんな人混みのなかじゃ、皐月も上手く動けないだろう。するすると人の間を抜けて前へと足を進ませる。
――しかし。
「待てって言っただろ!」
「うお!!」