キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
あっけなく腕を捕まえられてしまった。そのままずるずる引きずられて、ゲートへ向かう人達の波から一旦外れる。
「おま、何してんだよっ」
「な、何って……」
「さっき、お前が明らかに様子変だったから追いかけてきたけどさ。まじで焦った」
「…………」
「あれか。香澄さんと碧音の話だろ」
私の無言を肯定と受け止めた皐月は、ふぅと息を吐く。そうだよ、図星ですよ全くその通りです。
「お前が2人の関係見せつけられてとどめにあんな話されたら。こうなっても仕方ねぇか」
ぽんぽん、頭を撫でられる。皐月の手って、大きいよね。それで角ばってて、男の人の手って感じ。
「……私、自分の名前呼ばれたとき一瞬碧音君かなって期待しちゃった」
「悪かったな。碧音じゃなくて」
「少女マンガでもドラマでもよくあるじゃん、ヒロインが駆け出していったあとを、好きな相手が追いかけてきて引き留めるやつ。バカだよね私」
「でも、こういう展開もアリだろ。ヒロインが意識してる相手とは別の男が追いかけてきて、そこから展開が動き出すやつ」
「面白いこというね」
「俺、結構本気で言ってる」