キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
声のトーンが低くなり、目の色も真剣味を帯びていて。皐月に真剣に見つめられると、どうにも体が動かなくなる。ついでに冗談を言って躱すことも出来なくなってしまう。
「本気って……、ああ、うん。皐月の言う展開もあるんじゃない?私ドラマで見たことある気がする」
「そういう意味じゃなくて」
「え、違う?」
「あー……まぁいいわ。そういうことにしとけ」
皐月はくしゃりと髪をかき乱して眉を寄せた。髪を崩したにも関わらず、それもオシャレな無造作ヘアーに見えてしまうのだからイケメンは恐ろしい。
「で、これからのことだけど。遊園地、出ようぜ」
「皐月は戻りなよ。皐月が乗りたいって言ってたアトラクション、まだ残ってるじゃん」
「んなのまた来たときでいいんだよ。それよりも、2人でどっか別の場所に行こう」
「でも」
「お前を、1人で放っておくわけねぇだろ」
「……さ、つき」
「香澄さんと碧音にはもう戻ってこないかもって伝えてあるし。さ、行くぞ」
二カッと笑った皐月に手を握られ、今度こそゲートへ行く。
「皐月」
「おー?」
「ありがとう」
1人で帰るよりは皐月の提案にのった方が気持ち的に楽になれると思う。だから今回は甘えさせていただきます。私がお礼を言うと、皐月は振り返って少し笑う。
私も、それにつられて口角が上がっていた。
――――皐月の思いは、知らないまま。