キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
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「………」
「なによ碧音。怒ってる?キスの話?」
「怒ってないけど。ただの事故だっただろあれ。それより皐月と明日歌、大丈夫かな」
碧音は遠くを見つめ、ぽつりと溢す。
数分前、明日歌がトイレに行ったきり戻ってこないことに心配し始めたとき、皐月が『俺ちょっと行ってきます!多分戻ってこないと思うんで2人で楽しんでください!』と言って追いかけていった。
それからずっと碧音は私との話は上の空で、こうして2人が行った方向に目を留めているけれど。
面白くないわね。
「やっぱり、俺らも行った方が……」
ガタ、椅子から立ち上がった碧音の手を掴み『待って』と制止する。
「皐月から2人で遊園地を出たって連絡がきてたわ」
携帯を弄っていたら皐月からメールがきていたから、その文面を碧音に見せる。
「2人で諸事情により風園地から出ました、2人で遊んでください?」
「そういうことみたいね。だから追いかけない方がいいわ」
「諸事情って」
碧音の瞳に、薄っすら不安の色が滲む。
「私達が心配することじゃないわよ。それに、2人の邪魔しちゃ悪いじゃない」