キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「どういうこと?」
「2人共、今頃良い雰囲気になってるかしら」
努めて自然に、自分の腹の底にある感情がでないように言葉を並べた。
「ふふ、碧音も分かるでしょう?」
敢えて含みのある言い方をする。碧音は察しのいい子だもの、私の言ってる意味、分かるでしょう?
「皐月と明日歌は……」
「さぁ、どうかしら」
曖昧に誤魔化すと、碧音は不服そうな顔。私が全て説明しなくても、本当は勘づいてるくせに。可愛い子。
「2人の心配をしなくていいってことが分かったんだから、遊びましょうよ。はーやーく」
身なりを整えバッグを肩にかけて店を出る準備をする。
急かせば碧音も上着のジャケットを着て席を立つ。でもその瞳が、まだ明日歌達が去っていった方向を向いていて。……気に食わないのよ、あの子のことを気にしているのが。
私と一緒にいるっていうのに。どうしちゃったの、碧音。
「碧音、早く行きましょう」
「ああ」
碧音の中での私の位置が、揺らいでるんじゃないのかって一瞬浮かんだ考えは、すぐに脳内から削除した。
そんなわけが、ないわよね。