キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
2人だけの教室。静かに流れる時間。碧音君の柔らかいレモングラスの香り。
「……あのさ。遊園地に行ったときは、ごめんね。途中で帰っちゃって」
遊園地の件があってから碧音君とちゃんと話すのは今日が初めてで。
「びっくりした。急にいなくなるから」
「ちょっと、色々ありまして。でも皐月が送ってくれたから大丈夫だった」
「――そう」
僅かに眉を下げて、目を細める。何で、碧音君がそんな表情するの。碧音君が今みたいな顔をするのはどんな時か、分かってる。分かってるけど、どうして。
勘違いしちゃうよ、私。
恋する乙女は自分の都合のいいように捉えてしまうものなんだよ碧音君。
「碧音君は、香澄さんと楽しめた?」
バカか、聞きたくもないくせに。
「アトラクションはほぼ乗った。香澄、こっちに来るまでずっとギター漬けだったからいい息抜きが出来たって言ってて。良かった」
「はしゃいでたもんね、香澄さん」