キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】


「むしろ私は良いことをしたと思ったわ。明日歌に振り向いて欲しい皐月に、チャンスをあげたんだから」


「やり方が強引だろ、どう考えても」


「でも誰かが動かないと状況は変わらない」


「片瀬、お前何焦ってんの」


核心を突いて、畳みかけてやる。


「片瀬らしくないねぇ、こういうやり方。もっと真正面からぶつかっていくのが、片瀬のやり方だと思ってたけど?」


彼女のコーヒーを握る手に力が入っていく。図星か。


「時間が、時間がないの」


切羽詰まった声。


「私が日本にいられるのもあと少し。それまでに、何とかしたいのよ」


「何とか、ねぇ」


「そうよ」


「けど、刹那も片瀬がいつもと違うって気づいてるっぽいよ。何も言わないけど」


「碧音が?」


「うん。このままだと、片瀬的に良くないんじゃない」


「大事なことは、腹割って話さないと。フェアにいこうよ、フェアに」


時間がないからこそ、ちょっとした焦りや先走りが悪い方向に働いてしまう。


「…………分かってるわよ」

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