キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【衝突】
「ねぇ菜流、どうしても私も一緒に行かなきゃいけない?」
「いいじゃん、星渚が忘れてった書類届けるだけだし。ついでに明日歌も練習見たいでしょ?」
「うーん……」
星渚さんに今日中に提出しなきゃいけない書類をスタジオに届けに行くのは全然構わないけど。碧音君も香澄さんもいるはずだ。
「学校帰りにあのスタジオに行くの久し振りすぎて、わくわくする!」
「あ、あはは」
正直わくわくとは程遠いけども。結局こうして着いてきたのは、あの2人のことが気になるからで。川岸を歩き真っ直ぐ舗装された道を進めば、いつものスタジオに到着。
私、碧音君にどんな顔して会ったらいいんだ。受付の人に事情を話して入れてもらい、碧音君達が使ってる練習室の向かう。
普通に、笑って話せるだろうか。お疲れさまって声をかけて、変わらない態度でいられるかな。
色々と考え込んでる間に、菜流がドアを開けた。
「お疲れー!星渚!」
練習室に声が響き、楽器の音が鳴り止む。
「菜流!何で来たの」
すぐに愛しの妹に駆け寄る星渚さん。その様子に皐月と藍もしょうがないなというように笑う。
あれ、碧音君いないのかなともう一歩練習室に踏み込んで室内を見回すと、椅子に座って楽譜を見ていたのは――香澄さんだった。体が強張っていく。
「あのね、忘れ物届けに来たの。はいこれ、バイトの契約更新の書類」
「嘘、ちゃんとファイルに入れたと思ってたのに」
「机の上に置きっぱなしだったよ?今日はスタジオで練習したあとそのままバイトだって言ってたから、家には戻ってこないと思って。届けに来た」