キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「へぇ、私一度も会ったことないけど」
「香澄さんはプロのギタリストになるために修行でアメリカに行ってたから」
「アメリカで修行してたってこと?うわー、すごいね」
「うん、香澄さんは努力家で、すごい人だよ」
有言実行、自分が決めたことはやり通す。その強さは、まだ私にはないもので。
「女性のギタリストって、格好いいよね」
「あんまりいないしね」
そして菜流は宣言通り、数十分したら帰ろうと言って練習室から離れた。
私も練習室に向かって頭を下げて、菜流と出入り口へ行く。
もっと星渚さんの練習姿を見たいはずなのに、相手のことを優先して我慢できる辺り、菜流はちゃんとしてる。こういうとこ、星渚さんも好きなんだろうな。
自動ドアをくぐり外に出て、駅を目指そうとした――けれど。
「明日歌!」
後ろから名前を呼ばれた。
「あ、さっきの女の人だよね」
何かあったのかなと菜流も後ろを振り返る。
「明日歌、ちょっと話があるの」
「え……っと」
「星渚の妹の、菜流ちゃんよね。明日歌、借りてもいいかしら?」
にこり、笑顔で菜流に問う。
「はい、私は全然良いですよ」
「ちょっ、菜流」
「どうぞ2人でごゆっくりー」
「ありがとう、菜流ちゃん」
「いえいえー。じゃあね、明日歌」