キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
キッと睨まれて、一歩後退する。
「はっきり行くって言ってくれなかった!明日歌、あなたのせいよ」
「私の……?」
ちょっと待ってください、私のせい?何でいきなり私が話に登場するんだ。碧音君がアメリカ行きを決意しきれないのは、私が関係してる?
「星渚に釘を刺されてたけど、もういいわ。……明日歌、碧音に何をしたの。碧音に何を言ったの?ねぇ、どうやって碧音を変えたのよ!」
香澄さんがここまで感情をむき出しにした姿を見るのは、初めてだった。周りなんて気にせず、どうしてと声を荒げる。
「どうやってって、言われても。私は何かしたわけじゃ……」
「けど実際碧音は――変わったの」
歪んだ表情、腹の底から絞り出したような言葉。
「明日歌、碧音のこと好きなんでしょう?なら碧音の夢の邪魔、しないでくれる?」
「邪魔するつもりはっ」
「碧音の歌や、勿論ギターの技術も群を抜いてる。これからもっと修行すれば必ずプロになれる。才能もあって、努力を惜しまないから尚更ね」
私も、碧音君が努力家なことは十分知ってる。碧音君の歌のすごさだって、知らないわけないじゃないか。
「こんなチャンス、ないのよ。今を逃したらチャンスはいつ巡ってくるか分からない」
「……、私は」