キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
「……ふっ、ははっ」
同時に肩を揺らし口に手の甲を当てて、くしゃりと顔を崩し笑うのは―――――碧音君。
う、嘘。
碧音君がこういう笑い方してるの、初めて見た。見下し蔑んだ笑みでもなく、意地の悪い笑みでもない。純粋な笑顔。
自然に笑った表情は年相応で、少し幼さが残っている。
「……あほひ君」
思わず声をかけると、碧音君ははっとしたようにまた元の無表情に戻ってしまった。ええー、残念。
「………練習、行こ」
「おう!腹ごなしも出来たし!」
「明日歌ちゃん、美味しかった。片付け頼んでごめんな」
「いえいえ。練習頑張ってください」
碧音君が皐月の背中を控え目に押して部屋から出ようとする後ろを、藍さんが着いていく。
「やることやったら練習見に来なよ~。地下室行って直ぐ左側の部屋だから」
「じゃあ残りの宿題終わったら行きますね。碧音君、そこのテーブルでやってもいい?」
「好きに使って」
星渚さんと碧音君が最後にリビングを出て、練習しに地下室へ向かった。
「よーし」
片付けますかね。キッチンに立ち、スポンジに洗剤を付けて1皿ずつ洗う。皆綺麗に食べてくれたから、お皿にあまり汚れが残っていなくて楽。