キスと涙で愛を知る【加筆修正・完】
【フェンス越しの空を】





昼休みの屋上。今日は少し寒いから皆ここにはきていない。


「碧音君にとって、何がいいか……ね」


香澄さんに言われた言葉が何度もリピートされる。碧音君は、アメリカに行ってプロになるチャンスを持ってること。


私の存在が、そのアメリカ行きを決めかねている原因になっていること。


「香澄さんが、正しい」


だって、昔からそうだった。一緒にバンドをやっていて、香澄さんが判断を誤ったところを見たことがない。香澄さんの決断や意見は、正しい。


私も経験でそれが分かっているからこそ、今回の件でも碧音君のことを考えたら香澄さんの言うことが正しいのかなと思う。


「じゃあ、私は、碧音君の背中を押す……?」


出来るのか、そんなこと。でも、今が碧音君にとってチャンスなのは間違いない。碧音君がどれだけ音楽が好きで練習に打ち込んできたのかも、見てきたから。


誰にでもチャンスが巡ってくるわけじゃないんだ、それを私は自分のために行かないでって言って潰すの?


それは、出来ないよ。


碧音君も自分の大切な人と一緒の夢を目指して頑張っていける方が幸せなんじゃないかな。


「碧音君……」


好きだよ。


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